人との縁から生まれるもの
突然ですが皆さんは日頃、大切な人へ「ありがとう」の気持ちを伝えられているでしょうか? 今回紹介する作品は、そんな大切なへの感謝、人とのつながりの大切さを、改めて感じさせてくれる一冊です。
小説の舞台となるのは鎌倉。そこで、祖母から継いだ小さな文具店兼代書屋を営む主人公の鳩子が、風変わりな代書の依頼者たちや街の人たちとの交流を通して、仲違いしたまま亡くなってしまった祖母への想いに気づいていく……というのが本作のあらすじです。
作中では、古都・鎌倉の趣ある四季の描写を交えながら、様々な依頼者との出会い、代書という仕事を通じて、先代(祖母)への鳩子の気持ちが徐々に変化していく様が、心温まるかたちで描かれています。
著者のやさしく、おだやかな文体と、感動的なストーリー運びも素晴らしく、作品を読み進めて行くなかで、家族、恋人、友人……自分にとっての大切な人が自然と頭に思い浮かび、かけがえのない人とのつながり、感謝の気持ちの大切さを、より強くさせてくれます。
『ツバキ文具店』
著: 小川糸
幻冬舎